インビザラインのゴムかけ完全ガイド|効果と正しい使い方
インビザラインのゴムかけとは?歯列矯正の強力な味方
インビザライン矯正を始めると、治療の途中で「ゴムかけをしましょう」と言われることがあります。マウスピースだけでなく、さらにゴムまで?と少し戸惑う方も多いでしょう。
ゴムかけは、マウスピース矯正の効果を高める重要な補助的役割を果たします。適切に行うことで治療期間の短縮や、より理想的な歯並びへの改善が期待できるのです。
歯科医師として多くのインビザライン症例を手がけてきた経験から言えることは、ゴムかけの有無が治療結果を大きく左右するということです。特に噛み合わせの改善が必要なケースでは、その効果は顕著に現れます。
今回は、インビザラインのゴムかけについて、その役割から効果、正しい使い方まで徹底解説します。この記事を読めば、ゴムかけの重要性を理解し、より効果的な矯正治療を進められるようになるでしょう。

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インビザラインのゴムかけが必要な理由と主な効果
インビザラインのゴムかけは、単なる追加処置ではなく、治療効果を最大化するための重要なステップです。では、具体的にどのような効果があるのでしょうか?
マウスピースだけでは難しい動きをサポート
マウスピース矯正は左右の歯並びを整えるのは得意ですが、上下の噛み合わせを調整するのは苦手な側面があります。ゴムかけは、マウスピースだけでは難しい上下方向への歯の移動をサポートします。
特に出っ歯や受け口といった上下顎の前後的なズレの改善には、ゴムの引っ張る力が非常に効果的です。マウスピースとゴムかけを組み合わせることで、より複雑な歯の動きが可能になるのです。
治療期間の短縮効果
ゴムかけを行うことで、歯に加わる矯正力が増します。これにより、歯の移動がスムーズになり、全体の治療期間を短縮できる可能性があります。
私の臨床経験では、同じような症例でもゴムかけを適切に行った患者さんは、そうでない方と比べて約1〜3ヶ月ほど治療期間が短くなるケースが多いです。
治療期間の短縮は、患者さんの負担軽減にもつながります。マウスピースの装着やメンテナンスの期間が短くなれば、それだけ日常生活への影響も少なくなるでしょう。
微妙な噛み合わせの調整が可能に
歯並びがある程度整ってきた治療の後半では、微妙な噛み合わせの調整が必要になります。ゴムかけはこの段階で特に威力を発揮します。
上下の歯がきちんと噛み合うことは、見た目の美しさだけでなく、咀嚼機能や発音、さらには顎関節の健康にも関わる重要なポイントです。ゴムかけによる細かな調整が、機能的にも優れた歯列を作り上げるのです。
あなたは自分の歯並びについて、どのような悩みをお持ちですか?
インビザラインのゴムかけの種類と使い分け
ゴムかけにはいくつかの種類があり、患者さんの症状や治療目標によって使い分けられます。それぞれの特徴と効果について見ていきましょう。
Ⅱ級ゴム(クラスⅡゴム)
Ⅱ級ゴムは、主に出っ歯(上顎前突)の改善に使用されます。上の前歯を後ろに引っ張り、下の前歯を前に出す効果があります。
具体的には、上顎の犬歯(3番目の歯)付近と下顎の第一大臼歯(6番目の歯)付近にゴムをかけます。ゴムの引っ張る力で、上の歯を後方に、下の歯を前方に移動させるのです。
出っ歯の患者さんでは、このⅡ級ゴムによって、上下の前歯の前後的な位置関係が改善され、自然な口元のラインが得られます。
Ⅲ級ゴム(クラスⅢゴム)
Ⅲ級ゴムは、受け口(下顎前突)の改善に効果的です。Ⅱ級ゴムとは逆の方向に力をかけ、上の前歯を前に出し、下の前歯を後ろに引っ張ります。
上顎の第一大臼歯(6番目の歯)付近と下顎の犬歯(3番目の歯)付近にゴムをかけるのが一般的です。この配置によって、上の歯を前方に、下の歯を後方に移動させる力が生まれます。
受け口の改善は、見た目だけでなく咀嚼機能の向上にもつながります。適切なⅢ級ゴムの使用で、より自然な噛み合わせを目指せるのです。
垂直ゴム(バーティカルゴム)
垂直ゴムは、主に開咬(かいこう)の改善に使用されます。開咬とは、上下の前歯が閉口時に接触せず、隙間が空いてしまう状態です。
垂直ゴムは上下の歯を垂直方向に引っ張り、開咬を閉じる効果があります。上下の対応する歯にゴムをかけることで、歯を引き寄せる力が働きます。
開咬の改善は、前歯での食べ物の噛み切りや、正確な発音にも関わる重要な治療です。垂直ゴムの適切な使用が、機能的にも審美的にも満足度の高い結果につながります。
交叉ゴム(クロスゴム)
交叉ゴムは、歯列の正中(中心線)のズレや、交叉咬合(歯が交差して噛み合っている状態)の改善に使用されます。
上下の歯を斜めに結ぶように装着し、歯列の横方向への移動を促します。これにより、歯列の中心線を合わせたり、交叉している歯の位置関係を修正したりできます。
歯列の正中を合わせることは、顔の対称性にも影響する重要なポイントです。交叉ゴムの適切な使用が、バランスの取れた美しい口元の実現に貢献します。
インビザラインのゴムかけの時期と期間
ゴムかけはいつから始めて、どのくらいの期間続けるのでしょうか?この疑問は多くの患者さんが持つものです。ここでは、ゴムかけの時期と期間について詳しく解説します。

ゴムかけの開始時期
ゴムかけの開始時期は、患者さんの症例によって異なります。一般的には、インビザライン治療の中盤から後半にかけて開始することが多いです。
歯並びがある程度整ってきた段階で、噛み合わせの調整を目的としてゴムかけを始めるケースが多いですが、治療初期から必要となる場合もあります。
私の臨床経験では、全体の治療計画の中でゴムかけの最適なタイミングを見極めることが重要です。早すぎると効果が薄く、遅すぎると治療期間が延びてしまう可能性があります。
ゴムかけの期間はどのくらい?
ゴムかけの期間も症例によって様々です。短い場合は1ヶ月程度で終了することもありますが、複雑な噛み合わせの改善が必要な場合は、半年以上続けることもあります。
一般的には、3〜4ヶ月程度ゴムかけを続けるケースが多いでしょう。定期的な通院時に歯の動きを確認しながら、ゴムかけの継続や終了を判断していきます。
ゴムかけの期間中は、定期的にゴムの種類や装着方法が変更されることもあります。これは、歯の動きに合わせて最適な力を加えるための調整です。
1日の装着時間の目安
ゴムかけの1日の装着時間は、マウスピースと同様に1日20時間以上が基本です。食事や歯磨きの時は外しますが、それ以外の時間はできるだけ装着し続けることが重要です。
就寝中もゴムをかけたままにすることで、長時間安定した力を歯に加えることができます。これにより、より効果的な歯の移動が期待できるのです。
装着時間が短いと、十分な効果が得られず、治療期間が延びる可能性があります。指示された装着時間を守ることが、スムーズな治療につながります。
あなたは毎日どのくらいマウスピースを装着できていますか?
インビザラインのゴムかけの正しい方法
ゴムかけを効果的に行うためには、正しい方法で装着することが不可欠です。ここでは、ゴムかけの具体的な方法と注意点を解説します。
ゴムかけの基本的な手順
ゴムかけの基本的な手順は以下の通りです。
- 清潔な手で医療用ゴムを用意する
- マウスピースを装着した状態で行う
- 指定された場所(マウスピースのフックやボタン)にゴムをかける
- 鏡を見ながら、ゴムが正しい位置にあるか確認する
最初は慣れないかもしれませんが、練習を重ねるうちに素早く装着できるようになります。歯科医院では実際にゴムかけの練習を行いますので、不安な点はその場で質問しましょう。
ゴムかけのコツと注意点
ゴムかけを行う際のコツと注意点をいくつか紹介します。
まず、ゴムをかける際は、奥歯から始めるとやりやすいでしょう。奥歯のフックにゴムをかけてから、前歯側のフックに移動させます。
ゴムが見えにくい場合は、頬を少し引っ張ると視界が確保しやすくなります。また、専用の器具(エラスティックホルダー)を使うと、より簡単にゴムをかけられます。
ゴムは毎日新しいものに交換することが重要です。使用済みのゴムは伸びが弱くなり、十分な矯正力が得られなくなります。
また、指示された強さ(サイズ)のゴムを使用することも大切です。強すぎるゴムは歯や顎に過度な負担をかけ、弱すぎるゴムは効果が不十分になります。
よくある失敗とその対処法
ゴムかけでよくある失敗とその対処法についても知っておきましょう。
最も多いのは、ゴムを間違った位置にかけてしまうことです。これを防ぐには、鏡をよく見ながら行い、不安な場合は歯科医院で撮影した自分のゴムかけの写真を参考にするとよいでしょう。
ゴムが途中で切れてしまうこともあります。外出先でゴムが切れた場合に備えて、予備のゴムを持ち歩くことをおすすめします。
また、ゴムかけを始めた当初は、違和感や軽い痛みを感じることがあります。これは通常2〜3日程度で慣れてきますが、強い痛みが続く場合は歯科医師に相談しましょう。
ゴムかけは自己管理が重要な処置です。正しい方法で継続することが、治療成功の鍵となります。
インビザラインのゴムかけQ&A
ここでは、患者さんからよく寄せられるゴムかけに関する質問とその回答をまとめました。
ゴムかけは痛いですか?
ゴムかけを始めた直後は、歯に新たな力が加わるため、軽い違和感や痛みを感じることがあります。しかし、多くの場合2〜3日程度で慣れてきます。
痛みの程度は個人差がありますが、マウスピースを新しく交換した時と同様の軽い痛みであることが多いです。強い痛みが続く場合は、ゴムの強さや装着方法に問題がある可能性があるため、歯科医師に相談しましょう。
ゴムかけは話しにくくなりますか?
ゴムかけを始めた直後は、口の中に異物があることで、若干話しにくく感じることがあります。特に「サ行」や「タ行」の発音に影響が出やすいです。
しかし、多くの患者さんは1週間程度で慣れ、ほぼ普通に会話できるようになります。慣れるまでは、少しゆっくり話すことを意識すると良いでしょう。
ゴムかけをしないとどうなりますか?
ゴムかけが必要と判断された場合に、指示通りに行わないと、理想的な歯並びや噛み合わせが得られない可能性があります。特に上下の噛み合わせの改善が必要なケースでは、ゴムかけの有無が治療結果に大きく影響します。
また、ゴムかけを怠ると、治療期間が延長する可能性もあります。予定していた期間内に治療が完了せず、追加のマウスピースが必要になるケースもあるでしょう。
ゴムかけは外出先でも行う必要がありますか?
基本的には、食事や歯磨き以外の時間はゴムをかけたままにすることが推奨されます。そのため、外出先でも装着を継続することが理想的です。
外出先でゴムを交換する際は、トイレなどの清潔な場所で手を洗ってから行いましょう。また、予備のゴムを持ち歩くことで、ゴムが切れた場合にも対応できます。
外出先でのゴムかけが難しい特別な事情がある場合は、事前に歯科医師に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
まとめ:インビザラインのゴムかけを成功させるポイント
インビザラインのゴムかけは、マウスピース矯正の効果を最大化するための重要な補助的処置です。適切に行うことで、治療期間の短縮や、より理想的な歯並びの実現が期待できます。
ゴムかけを成功させるポイントは以下の通りです。
- 指示された装着時間(1日20時間以上)を守る
- 毎日新しいゴムに交換する
- 正しい位置に確実にゴムをかける
- 予備のゴムを常に持ち歩く
- 不明点や違和感があれば早めに歯科医師に相談する
ゴムかけは自己管理が重要な処置です。歯科医師の指示に従い、継続的に行うことが、治療成功の鍵となります。
インビザライン矯正は、患者さん自身の協力があってこそ、最大の効果を発揮します。ゴムかけという一見面倒に思える処置も、理想の歯並びへの重要なステップと考え、前向きに取り組んでいただければと思います。
当院では、インビザライン治療に関する様々なご質問やお悩みにお答えしています。ゴムかけについて不安な点があれば、お気軽にクラリス歯科・矯正歯科までご相談ください。あなたの素敵な笑顔のために、最適な矯正治療をご提案いたします。

著者情報
オーラルビューティークリニッククラリス歯科・矯正歯科院長 引野 貴之
経歴
神奈川歯科大学卒業
日本歯科大学附属病院にて勤務
都内の歯科医院にて副院長として6年勤務
学会・資格など
日本口腔インプラント学会会員(日本口腔インプラント学会認定100時間講習会修了)
公益社団法人 日本歯科先端技術研究所(JIAD)会員/JIAD インプラント認証医
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